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雪山で得たスキルは、夏山でも存分に役立ちます。
標高の高い山では、冬の厳冬期から春の残雪期まで、けっこう長い間、雪が残ります。
トレース
雪山では、もともとどこが登山道だったのか、わかりません。
逆に、夏山では歩けないルートも、雪山では歩ける楽しみもあります。
ヤマレコやYAMAPで登山記録を見ていると「自分がつくったトレースと、誰かのトレースがつながった」みたいなことがあって、会ってないけどお互いに存在を感じているみたいなことが起こります。
ライブカメラ
登山アプリで登山記録をみる以外に、登山口や山荘に設置されているライブカメラで、現地の雰囲気を掴むことができます。
ほんの数日で、雪の積もり方や、ルートの状況は変わります。
登山記録ではトレースがばっちり、と書かれていても、いざ行ってみるとトレースがなく、動物の足あとくらいしかないこともあります。
雪山での登山計画と撤退
雪山では、状況を判断して、途中で撤退はよくあることです。
吹雪でホワイトアウトや、交通機関のトラブル、トレースがないことによる時間切れなど、様々な要素が重なります。
しっかり準備をして、せっかくここまで来たのにと、引き返すのはくやしいですが、生きて帰らないと次がありません。
冬季は、バスやケーブルカーの最終時間が早いので、この時間までにチェックポイントに到達するといった、デッドラインを設定してください。
また、何が起きてもあせらず行動できるように、余裕をもって、すぐに別案でも対応できるようにしておきます。
雪山での装備リスト
夏山に比べて雪山の登山は、道具が増えるので荷物が重くなります。
だからこそ、道具を厳選してそろえてください。
これから、雪山での装備リストを紹介していきます。
ザック
登山靴
ソックス
チェーンスパイク
アイゼン
ゲイター
トレッキングポール
ピッケル
グローブ
バラクラバ
ワカン
サングラスとゴーグル
日焼け止め
行動食
保温ボトル
です。
ザック
ピッケルを簡単に取り付けられるザックもあります。
他にも、トレッキングポール、ヘルメット、アイゼンを一時的に取り付けられると便利です。
登山靴
防水で保温性があって、アイゼンを履くための硬いソールが特徴です。
冬用の登山靴は、選択肢は多くありません。
夏用の登山靴よりも、フィッティングがシビアです。
つま先の形状、甲の高さ、足幅、どれもフィットしている必要があります。
足が靴擦れになると、雪山では絆創膏を貼るのも凍傷につながるので、命の危険さえあります。
個人的には、足の形が幅広で甲高という日本男児なので、日本人のための「Sirio」というメーカーの登山靴がフィットしています。
靴紐が解けない結び方
紐の結び方で履き心地が変わりますが、足首は柔らかくしておきたいです。
登りでは、足の甲の紐はしっかりと締めて、足首の紐はゆるめにしておくのが基本です。
靴紐が解けない結び方があります。
いつもの結び方に加えて、1回ずつ多めに紐を通します。
ここでさらにもう1回、ここでもさらにもう1回です。
ソックス
メリノウールの中厚手のソックスです。
登山靴の中は、汗だけではなく、外との気温差で結露します。
足をドライな状態に保つことが重要です。
インナーソックス
冬用の登山靴の時に、中厚手のメリノウールのソックスの下に、インナーソックスを履いています。
効果としては、足をドライに保ってくれるので汗びえを防ぐのと、足がふやけないので靴ずれ防止にも繋がります。
チェーンスパイク
登山口には雪はなくても、標高が上がるとガチガチなアイスバーンになっていることもあります。
春先の残雪期まで、一年を通して使うことが多い道具です。
アイゼン
アイゼンを買うならグリベルって決めてました。
グリベルのアイゼンはリコールもなく、細かなアップデートのみで、基本的な構造は変わっていません。信頼と実績のグリベルのアイゼンです。
紐の扱い方ですが、国際山岳ガイドの近藤謙司さんがおすすめしている方法があります。
【1/8】ベルトはカットせず、買ったままの状態にします。
【2/8】先端に結び目を作ります。
【3/8】アイゼンのリングにベルトを通した状態で、靴を入れます。
【4/8】両手でベルトを引っ張って、ビンディングをセットします。
【5/8】先端の結び目を持って、ベルトを締めます。
【6/8】最後まで締め上げる前に、先端の結び目を下から通して引っ掛けます。
【7/8】これでベルトはぷらぷらしません。
【8/8】アイゼンを外す時は、力強く引っ張れば結び目は取れます。
ゲイター
ゲイターは、靴に雪が入るのを防ぎます。
アイゼンを引っ掛けてパンツに穴があくのも防ぎます。
まぁでも、だいたい補強が終わったあたりに穴を開けます。
トレッキングポール
トレッキングポールは、夏用のものを流用できます。
バスケットを付け替えることで、雪に沈みにくくなります。
ピッケル
ピッケルは、杖のように使ったり、滑落したときに止めるために必要なものです。
樹林帯のなだらかな登りではトレッキングポールを使って、登りが急になってくる前にピッケルに切り替えます。
ストレートシャフトと、ベントシャフトがあります。
まっすぐか、少しだけベントしているかの違いです。
ダガーポジションで扱いやすい、ベントシャフトをおすすめしたいです。
ピッケルの長さも重要な要素です。こういった、コンベックスと呼ばれるメジャーで、長さをイメージすることができます。
ちなみに、65cmのピッケルは、スーツケースにギリ入ります。
(RIMOWA Original Check-In M / サイズ:69×44×27.5cm / 容量:60L)
プロテクターとリーシュ
ピッケルのプロテクターは、交通機関での移動時に先端を覆うものです。
たとえば登山口に向かうケーブルカーの中で、目の高さに誰かのピッケルの先端がくることもあるので、みんながプロテクターをつけているわけではないことを理解しておきます。
リーシュは、ピッケルを使っているときに、落とさないようにするために使います。
アイゼンでの歩き方、ピッケルの使い方
1回の雪山登山でスキルレベルを上げるのはもちろんですが、アイゼンとピッケルの感覚を掴みながら、その日のうちに一歩一歩確実にスキルを上げていける感性の高さが重要だと思います。
その日のうちに、歩きながら、レベルアップする感性です。
アイゼンでの歩き方
なだらかな傾斜は、ダックウォーク。ソール全体が同時に着地するフラットフィッティングで、つま先を開いて歩く。
傾斜大きくなってきたら、ダイアゴナル。足を交差させながらの横歩き。
さらに傾斜が増したら、スリーオクロック、ナインオクロック。ダイアゴナルとフロントポインティングの中間のような歩き方。山側の足をフロントポインティング、谷側の足をフィッティング。
手をついて登るくらいの傾斜になったら、フロントポインティング。前爪を使って雪面を蹴り込む。
ピッケルの使い方
杖のように使う、ケインポジション。ヘッドとシャフトのつなぎ目をにぎる。ピックの向きは、登山時は山側、下山時も山側になるように持ち変える。滑落停止の姿勢をとりやすいように。
傾斜が強くなってきたら、ダガーポジション。アッズをにぎる。ローダガーとハイダガーがある。
さらに傾斜が増したら、トラクションポジション。スパイクあたりをにぎってピックを突く。
グローブ
グローブの中を濡らさないことが大切です。
雪山での道具全般ですが、濡らしてしまうと下山まで乾くことはありません。
-20℃で吹雪なんていう状況では、指先の冷たさは我慢できるようなものではなく、凍傷になります。
グローブの中の温度と、外気の気温差によって、グローブ内が結露して濡れるので、ウェアの重ね着と同じように、薄手のインナーグローブで汗を吸い上げます。
5本指のグローブよりも、親指以外が一緒になったミトンタイプの方が保温性が上がります。操作性と保温力のバランスですが、その中間の3本指もあります。
サブとして持っておきたいのは、テムレスの防寒グローブです。
バラクラバ
雪山では、少しの風でも耳や鼻、顔全体が冷たくなります。
露出しているところがないように、バラクラバを被ります。
どうしても呼吸が苦しいし、吐く息で口の周りが凍ります。
鼻の部分に穴が空いていて、インナーとアウターを組み合わせて使うバラクラバがあるのですが、試してみたいと思います。
サブとして持っていくのは、ネックウォーマーとビーニーです。
この2つを組み合わせて、バラクラバのように使うこともできます。
ワカン
登山靴のまま歩くと足がズポズポ沈んでしまう場所でも、ワカンの浮力で歩けます。
紐で締め上げるものが一般的ですが、ラチェットで簡単に取り付けられるワカンもあります。
ワカンの原型は、トラディショナルな「立山かんじき」のような、日本古来の道具です。
より高い浮力を求めるなら、スノーシューです。
登りと下りを繰り返して、つま先やかかとも使って歩いていくような場所では、取り回しがよくて汎用性が高いのはワカンの方かと思います。
スノーシューは、平坦な雪道のトレッキングに向いています。
サングラスとゴーグル
雪に反射する強い日差しから目を守るサングラスと、吹雪から目を守るゴーグルです。
日焼け止め
冬でも、日焼けするくらい日差しが強いです。
行動食
行動食は、体で熱を作るためのエネルギーです。
ウェアは熱を保つもので、あくまでも熱を作りだすのは体です。
保温ボトル
山専用ボトルです。
熱湯を入れてから、6時間後でも80度を保つ保温力を持つボトルです。
お湯を沸かすことなく、山専用ボトルのお湯でカップ麺を作れます。
雪山で、お湯を沸かす時間で体が冷えてしまうのを防ぐための、休憩時間の短縮にもなるでしょう。